利上げ局面のマンション市場を読み解く:高価格帯に変化、実需層は堅調

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利上げ局面のマンション市場を読み解く:高価格帯に変化、実需層は堅調

DH住宅ローン指数の推移

2024年にマイナス金利政策が解除され、日本は本格的な利上げ局面に入りました。この金融環境の変化は住宅市場にも影響を及ぼすと考えられますが、首都圏の中古マンション市場全体を見ると、現時点では流動性が大きく低下しているとは言えず、比較的高い水準を維持しています。

金利上昇下でも堅調な中古マンションの流動性

特に東京都の1億5,000万円未満の中古マンションに注目すると、政策金利が0.25%となった2024年7月前後以降、「販売日数」および「値下げ回数」は継続的に減少しています。これは、売却時に価格調整を行わなくても比較的短期間で成約に至る状況が続いていることを示しており、需要の強さが市場の流動性を下支えしていると判断できます。この価格帯は実需層の主戦場であり、居住ニーズに基づく安定した需要が、金利上昇局面においても市場を支える構造が浮き彫りになっています。

東京都:15000万円未満中古マンションの販売日数と値下げ回数

高価格帯市場に生じる需要シフトと調整圧力

一方で、1億5,000万円以上の高価格帯マンション市場では異なる動きが見られます。この価格帯は、パワーカップルや経営者層といったハイエンド実需層に加え、投資家も多く参入する市場であり、投機的な取引も頻発することもあり、需給バランスの変化が価格に反映されやすい特性があります。景気や金融環境が良好な局面では価格が急騰しやすい反面、割高な物件が増えやすい傾向も否めません。

加えて、金利上昇による調達コストの増加は、借入を伴う購入者の負担を重くし、これまで高価格帯を選択していた一部の実需層が、より現実的な価格帯である1億5,000万円未満の物件へと購入対象を切り替えた可能性が高いと考えられます。その結果、高価格帯市場では成約までに時間を要するケースが増え、流動性の低下と価格調整圧力が徐々に表面化しています。

湾岸エリアに見る流動性低下と今後の市場構造

こうした傾向は、これまで極めて高い流動性と急激な価格上昇を示してきた東京都湾岸エリアにも表れています。同エリアは再開発の進展や利便性の向上、眺望や共用施設といった付加価値を背景に、長らく強い需要を集めてきました。

東京都湾岸エリア: 中古マンションの販売期間と値下げ回数

しかし、「金利のある時代」と明確に意識されるようになった2024年7月前後以降、「販売日数」および「値下げ回数」はともに増加に転じており、「価格を下げても売れない」物件が増え始めている状況がうかがえます。

もちろん、こうした動きを金利上昇だけで説明するのは適切ではなく、過去数年の価格高騰や供給構成の変化、購買層の価値観の多様化といった要因も影響しています。しかし、調達コストの上昇が購買力を制約し、結果として流動性が低下しやすくなる構造には一定の妥当性があります。今後の市場動向を見極める上では、金利動向のみならず、価格帯別・エリア別の需給構造の変化を総合的に捉える視点が一層重要になります。

金利動向のまとめ

変動金利

DH住宅ローン指数の推移 (変動金利)

2026年1月の変動金利は0.902%となり、前月および前年同月より上昇しています。2025年12月の日銀利上げ(0.75%)を受け、上昇基調が本格化しています。現時点で金利を引き上げている銀行は一部にとどまりますが、メガバンクの短期プライムレート引き上げを受け、春以降は多くの銀行で金利上昇が見込まれます。

日銀は2025年12月に政策金利を0.75%へ引き上げ、約30年ぶりに0.5%を超える水準となりました。金利は上昇したものの、円安傾向が続いていることから、輸入物価の上昇による家計負担への配慮も必要とされており、利上げペースは慎重に進められるとの見方もあります。一方で、日銀が想定する名目中立金利は1.0~2.5%とされており、現状の0.75%はまだ低水準であることから、市場では今後も金利が上昇する可能性が高いと受け止められています。

10年固定金利

DH住宅ローン 指数の推移 (10年固定金利)

2026年1月の10年固定金利は2.086%となり、前月から大きく上昇し、1年前と比べても上昇幅が拡大しています。国債10年物利回りの上昇を背景に、すべての銀行が金利を引き上げ、2%超が常態化しています。銀行は10年固定を主力商品とする姿勢を弱めつつあります。

10年固定金利は、これまで多くの金融機関で主力商品として位置付けられてきましたが、金利上昇に伴い、取り扱いを抑制する姿勢が目立ち始めています。観測対象となっている13行すべてが金利を引き上げ、auじぶん銀行を除くすべての銀行で2%を超える水準となっています。高市新政権による積極財政政策のもとで、国債増発への懸念が強まり、日本国債10年物金利には上昇圧力がかかっています。このため、10年固定金利についても、もう一段の上昇余地があるとみられています。ただし、市場では利上げ余地はあと0.25%程度との見方も多く、金利上昇が無制限に続くわけではなく、当面は一定の上限を意識した動きになるとの予想もあります。

全期間固定金利

DH住宅ローン指数の推移 (全期間固定金利)

2026年1月の全期間固定金利は2.868%となり、前月から上昇し、1年前からの上昇基調が続いています。フラット35は12年ぶりに2%台へ到達し、他の全期間固定商品と比べ割安感があります。

全期間固定金利は、変動金利との相対的な割高感から敬遠されがちでしたが、変動金利が上昇し始めたことで、徐々に注目度が高まっています。とはいえ、「5年ルール」や「125%ルール」により、変動金利利用者が急激な負担増を実感しにくいことから、依然として変動金利を選択する人が多数派です。一方で、フラット35は他の全期間固定商品と比べて割安であり、さらに「子育てプラス」と組み合わせることで最大1%の金利引き下げが可能となるため、変動金利に匹敵する競争力を持つ商品として積極的に検討する価値があります。

全期間固定金利は、日本国債10年物だけでなく、20年・30年・40年といった超長期国債の動向も反映して設定されます。直近では40年国債の利回りが低下するなど、金利の上限が意識される場面もありましたが、全体としては上昇基調が続いています。今後についても、世界経済の好調さが続けば、全期間固定金利はさらに上値を追う展開が想定されますが、景気の揺り戻しが生じた場合には、上昇ペースが鈍化する可能性もあります。

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