建築費高騰が価格を下支え
マンション価格の動向は需要側だけでは説明できません。現在の市場では、建築費や資材価格の高騰が構造的な価格上昇圧力として機能しています。人件費の上昇や資材供給の制約は新築マンション価格を押し上げ、その影響は中古マンションにも波及しています。金利上昇による需要抑制と、供給側のコスト増による価格上昇圧力が同時に作用し、市場は「下がりにくいが上がりにくい」高止まりの局面にあると考えられます。
再販事業の減速が示す市場の変調
市場の変化は、再販市場の動向に顕著に表れています。50㎡以上の新規売出件数に対する再販物件の割合は、2026年2月時点で大きく低下しています。

再販事業は、不動産会社が融資を活用して中古マンションを仕入れ、リノベーション後に販売するビジネスモデルです。しかし、購入需要の鈍化と政策金利上昇に伴う資金調達コストの増加が重なり、再販事業者も新規取得に慎重な姿勢を見せています。再販物件の減少は、現在の市場環境において適切な対応と言えるでしょう。
金利上昇でも価格が下がらない理由と代替需要
金利が上昇すれば、一般的に借り入れ可能額が減少し、不動産価格には下落圧力がかかると考えられます。しかし、実際の市場では単純な価格下落にはつながっていません。特に東京都周辺の神奈川県・埼玉県・千葉県といったエリアでは、価格そのものではなく「選択の中身」が変化する傾向が見られます。例えば、同じ予算内で「築年数を妥協する」「専有面積を縮小する」「築古物件を購入して自らリノベーションする」といった行動が増加しています。需要は消滅するのではなく、価格帯の中で再配分されているのです。
現在のマンション市場を支えているのは、こうした「代替需要」の存在です。金利上昇によって購買力は低下しますが、選択肢を変えることで需要全体は維持される構造となっています。消費者が許容できる価格の上限は意識され始めていますが、市場全体が大きく崩れる兆候は見られません。むしろ、局所的な調整はあっても、「建築費の高騰」や「需給バランス」によって価格は一定水準で支えられる展開が想定されます。
今後の市場は「下落」ではなく「選別」へ
今後のマンション市場は「全面的な価格下落」ではなく、「選別の強化」という形で調整が進む可能性が高いです。金利上昇という逆風は存在しますが、それ以上に供給制約と代替需要が市場を下支えしています。したがって、今後の焦点は「どの価格帯・どの物件が選ばれるか」に移ります。市場全体が崩れるのではなく、条件の弱い物件から順に調整が進む。これが現在のマンション市場の本質と言えるでしょう。
金利動向のまとめ(2026年3月時点)

変動金利
2026年3月の変動金利は全体としては横ばいで推移していますが、一部の銀行で引き上げが実施され、上昇トレンドは緩やかに継続しています。2025年12月の日銀の利上げを受け、メガバンクが基準金利を約0.25%引き上げたことが影響しています。他の銀行も今後追随すると見込まれ、来月以降は上昇が加速する可能性があります。日銀は追加利上げに前向きであり、今後も段階的な金利上昇が続く見通しです。

10年固定金利
2026年3月の10年固定金利はほぼ横ばいですが、前年と比較すると上昇基調を維持しています。長期金利の影響を受けつつも、足元では金融機関ごとの判断にばらつきがあり、方向感はやや不透明です。多くの銀行が金利を引き上げる一方で、指数は横ばいにとどまりました。水準は概ね2%超まで上昇しており、中長期的には上昇余地がありますが、短期的には一服感も見られます。

全期間固定金利
2026年3月の全期間固定金利は横ばいながら高止まりしており、上昇トレンドが継続しています。全金融機関が3か月連続で金利を引き上げており、上昇圧力の強さがうかがえます。水準は3%台が中心で一部では4%に到達し、前年から大きく上昇しています。一方で変動金利との比較から選択は限定的な状況です。今後も上昇余地はありますが、当面は上昇が一服する可能性もあります。

筆者プロフィール

福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社 データ事業開発室 不動産データ分析責任者
福嶋総研 代表研究員
早稲田大学理工学部を卒業後、大手不動産会社でマーケティング調査を担当。その後、建築設計事務所で法務・労務に携わりました。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査や評価指標の研究・開発を行いながら、顧客企業の不動産事業における意思決定をサポートしています。また、大手メディアや学術機関にもデータおよび分析結果を提供しています。

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