2024年度の「ゾンビ企業」は約21万社に減少、しかし金利上昇で再び増加の懸念

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2024年度「ゾンビ企業」の現状と動向

帝国データバンクは、2024年度決算における「ゾンビ企業」の動向について詳細な調査・分析結果を発表しました。この調査によると、2024年度のゾンビ企業数は推計約21万社、ゾンビ企業率は14.3%となり、いずれも2年連続で減少しました。この減少は、コロナ禍後の経済正常化や、倒産・休廃業に伴う企業の新陳代謝が一因と見られます。

ゾンビ企業

ゾンビ企業の定義

本調査における「ゾンビ企業」の定義は、国際決済銀行(BIS)が定める基準に準拠しています。具体的には、「3年連続でインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満、かつ設立10年以上」の企業を指します。インタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)は、(営業利益+受取利息+受取配当金)/(支払利息・割引料)で算出されます。

ゾンビ企業率の推移と業種・地域別傾向

2024年度のゾンビ企業率は14.3%で、2022年度の18.2%をピークに2年連続の減少となりました。

年度別ゾンビ企業率の推移

業種別に見ると、「小売」(19.6%)が最も高く、飲食料品小売やアパレルなどで消費者の節約志向による売上不振が続いています。次いで、燃料コストの高止まりや「2024年問題」に直面する一般貨物自動車運送業を含む「運輸・通信」(18.9%)が高い水準を示しました。一方、オフィスビルや商業施設、土地など市場価値が安定している「不動産」(6.2%)が最も低い結果です。

業種別ゾンビ企業率

従業員数別では、「5人以下」(20.7%)が唯一2割を超え最も高く、企業規模が大きくなるにつれてゾンビ企業率は低下し、「1,000人超」(1.8%)が最も低い結果でした。

従業員数別ゾンビ企業率

地域別では、「東北」(20.4%)が唯一2割を超え、都道府県別でも福島県(24.5%)、宮城県(21.7%)、岩手県(21.2%)が上位を占めています。これは、東日本大震災後の各種金融支援策の影響により、借り入れ負担が重い企業が多いことが背景にあると考えられます。対照的に、「関東」(10.9%)が最も低く、特に「東京都」は8.8%と全国で最も低い水準でした。

地域別ゾンビ企業率

これらのゾンビ企業率を基に、全国のゾンビ企業数は約21万社と推計されています。

年度別推計ゾンビ企業数

ゾンビ企業の収益構造と財務状況

ゾンビ企業の財務状況は、全企業平均と比較して脆弱性が顕著です。

収益力を示す「売上高経常利益率」は、2024年度のゾンビ企業平均がマイナス5.12%と、直近3年間で最も悪化しました。同年の全企業平均(2.94%)と比較すると、ゾンビ企業の収益力の厳しさが浮き彫りになります。人件費や原材料価格の高止まりに加え、価格転嫁が進まない業種では、採算割れが長期化していると見られます。

売上高経常利益率の比較

「有利子負債月商倍率」は、2024年度のゾンビ企業平均が9.47倍でした。全企業平均(5.11倍)の約2倍に達し、過大な債務を抱えている状況が続いています。借入依存度が高い企業では、金利負担増が収益を圧迫する悪循環に陥っています。

有利子負債月商倍率の比較

企業の安定性を示す「自己資本比率」は、2024年度のゾンビ企業平均がマイナス9.27%となりました。債務超過額の拡大が進み、全企業平均(29.49%)と比べると、ゾンビ企業の財務内容は会社経営の安定性において大きく見劣りする状態です。

自己資本比率の比較

経営破綻の危機に瀕する「倒産予備軍」

約21万社のゾンビ企業のうち、収益力(経常赤字)、過剰債務(有利子負債が月商の8.5倍以上)、資本力(債務超過)の3項目すべてに該当する企業は推計約3万6千社に上り、全体の17.2%を占めます。これは、ゾンビ企業のうち約6社に1社が経営破綻の危機に瀕している「倒産予備軍」であることを示しています。2025年の年間企業倒産件数(1万261件)の約3.5倍に達する規模です。

ゾンビ企業の経営課題

今後の見通し

ゾンビ企業数は2年連続で減少しましたが、その内実は深刻な格差とリスクを抱えています。日本経済は「物価高」「人手不足」に加え、日銀による利上げに伴う「金利のある世界」への歴史的転換期にあります。

ゾンビ企業の財務内容は悪化が続いており、わずかな金利上昇であっても死活問題となり得ます。特に「赤字・過剰債務・債務超過」の三重苦に陥る約3万6千社の「倒産予備軍」にとって、従来の金融支援に頼った延命策は限界に達している可能性があります。

金利上昇の本格化によって利払い負担が増し、収益を圧迫することで、ゾンビ企業が再び増加に転じる可能性も排除できません。さらに、円安環境や賃上げ動向でコスト増が進行し、価格転嫁できない企業の脱落も考えられます。これまで潜在化していた倒産予備軍が表面化する可能性は、日本経済の成長における大きな懸念材料と言えるでしょう。

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