2026年免税制度改正に対応、日本免税とJPYCがステーブルコインによる消費税還付モデルを構築
株式会社日本免税とJPYC株式会社は、2026年11月に予定されている免税制度のリファンド(事後還付)方式移行に対応するため、日本円連動ステーブルコイン「JPYC」を活用した新たな免税還付モデルの構築に関する業務提携に合意しました。日本円建てステーブルコインを消費税還付手段として活用するこの取り組みは、国内初となります。

2026年制度改正がもたらす課題
2026年11月より、日本の免税制度は出国後に消費税を還付する「リファンド方式」へ移行します。これは不正利用の抑止を目的としていますが、同時に以下の構造的課題を浮上させます。
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店舗がカード番号や口座情報を取得・管理することによる個人情報漏洩リスクと現場負荷が発生します。
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カード解約や番号変更などにより、税関承認済みであっても返金不能となるトラブルが発生する可能性があります。
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クレジットカード返金は手数料や期間制限、国際ブランド規約上の制約が残ります。
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着金までに数週間を要するケースが見られます。
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海外送金・カード返金手数料の累積によるコスト増大と制度の持続可能性への懸念があります。
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現金性の高い還付手段はマネーロンダリングや不正利用リスクを増大させます。
制度の枠組みが整っても、還付手段の設計を誤ると別種の不正やトラブルが発生します。正当な利用者に確実かつ安全に還付を届ける設計が、制度の実効性を決定します。

ステーブルコイン:訪日旅行者にとっての主要インフラ
日本ではまだなじみが薄いステーブルコインですが、世界では既に主要な決済・送金インフラとして確立されています。2025年9月時点の世界流通残高は約3,000億ドル(約44兆円)に達し、2024年の年間送金総額は27.6兆ドルとなり、同年のVisa・Mastercardの合算取引高を上回りました。特に訪日旅行者の主要出身地域である南アジア・東南アジアでは普及が加速しており、若年世代がスマートフォンのウォレットを日常的に利用しています。主要国・地域では法整備も急速に進んでいます。
訪日旅行者の多くにとって「ウォレットで還付を受け取る」ことは新しい体験ではありません。ステーブルコインによる還付は、旅行者側には負担がなく、店舗側はカード情報を一切扱わずに済む、双方にとって自然な選択肢です。
JPYCを活用した新たな還付モデル
本提携では、日本円建てステーブルコイン「JPYC」を還付手段として活用します。
- 店舗での金融情報取得ゼロ: カード番号や口座情報を店頭で扱う必要がなくなり、情報漏洩リスクが排除され、現場スタッフの負担も大幅に軽減します。
- 購入決済手段に依存しない即時還付: 税関承認データと連動し、ブロックチェーンを通じて国境を越えて旅行者のウォレットへ即時に送付されます。カード解約や番号変更の影響を受けない、返金不能を防ぐ設計です。
- 銀行口座不要の金融包摂: 専用アプリは不要です。普段使いのweb3ウォレットを指定するだけで還付金を受け取れます。銀行口座を持たないアンバンクト層を含む世界中の旅行者が対象となります。
- 完全なトレーサビリティによる不正抑止: JPYCは発行・移転・償還の全履歴がブロックチェーン上に記録されます。利用者単位・取引単位での追跡が可能となり、マネーロンダリング等の不正を制度設計の段階から構造的に抑止します。
- 外貨建ステーブルコインへのシームレスな交換: 受け取ったJPYCは、USDC等のグローバルな外貨建ステーブルコインへオンチェーン上で交換可能です。帰国後も高額な為替手数料なく自国の経済圏で活用できます。

追い風となる政策環境:日本版ESTA(JESTA)との親和性
政府は2025年に、短期滞在ビザ免除国(71か国・地域)からの訪日旅行者に対し、電子渡航認証制度「JESTA(日本版ESTA)」を2028年度中に義務化する方針を公表しました。認証未取得者は航空機・船舶への搭乗が拒否される制度として構想されており、訪日旅行者全員の情報がデジタルで管理される環境が整備されます。
JESTAのデジタル事前登録義務化は、免税リファンドに重要な意味を持ちます。JESTA情報と連携が実現すれば、店頭でのパスポートスキャンのみで本人確認が完結し、カード番号・口座情報の取得が不要なJPYC還付との設計上の親和性はさらに高まります。また、JESTAは法務省が推進する不法滞在対策と一体の施策であり、不正抑止を制度の根幹に据える政策方針は、日本免税が推進する「不正が起こりにくい還付手段の設計」という思想と方向性が一致しています。
リファンド方式の開始(2026年11月)とJESTAの導入(2028年度予定)はタイムラインが異なりますが、訪日旅行者情報のデジタル管理が段階的に整備されるなかで、本提携はこうした制度環境の進化を見据えた先行的な取り組みです。
日本免税が保有する特許群による裏付け
本スキームは、日本免税が保有する以下の特許に基づいています。
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特許第7671098号|非通貨(ポイント・デジタル価値等)を含む消費税還付方式: 消費税の還付手段を現金・クレジットカード等の通貨に限定せず、ポイント・デジタル価値・非通貨的手段を正式な還付方法として組み込む仕組みに関する特許です。ステーブルコインを制度上の正式な還付手段として位置付ける設計と極めて親和性が高く、本提携の法的根拠となります。
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特許第7671106号|還付成立に必要な設定未了の場合の設定促進・誘導: 「還付条件は満たしているが設定不備により返金できない」というリファンド方式特有のトラブルを構造的に防止する特許です。受取設定の充足状況を自動検知し、利用者へ適切なタイミングで案内・誘導します。JPYC還付においても、受取設定を後日でも成立させやすい設計を実現します。
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特許第7671099号|購買データと行動データを統合した免税・還付・活用: 免税購買データと旅行者の行動データを統合的に管理・活用する特許です。JPYC還付を不正傾向の検知・CRM・販促データの循環起点として機能させます。還付を単なるコスト処理で終わらせない設計です。
関係者コメント
日本免税株式会社 Founder & CEO 石井 邦知氏は、2026年11月に始まるリファンド方式を免税体験を根本から進化させる機会と捉えています。完全なトレーサビリティ、金融情報の非取得、不正の構造的な排除を同時に実現できる手段として、日本円建てステーブルコインという確かな技術基盤を持つJPYC株式会社との提携が最良の選択であると述べています。正当な旅行者に確実で安心な還付を届けることを使命とし、web3技術を活用した免税のDXを通じて、公共性の高い還付インフラを構築し、免税を日本の競争力と社会基盤へと高めていく方針です。
JPYC株式会社 代表取締役 岡部 典孝氏は、JPYCが日本円建てデジタル通貨として実需に根ざした利用拡大を目指してきたと語っています。今回の日本免税との提携は、2026年問題と呼ばれる事後還付の複雑な実務課題をweb3の力で解決する画期的な取り組みであると評価しています。国境を越えてシームレスに価値を移転できるステーブルコインは、世界中の旅行者を歓迎する日本の新しい免税インフラに最も適しており、免税還付という極めて公共性の高い国家制度の基盤領域でJPYCが活用されることは、日本円ステーブルコインが真の社会実装を果たす大きな第一歩となると認識しています。
参考情報
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観光庁(国土交通省):免税制度リファンド方式特設ページ: https://www.mlit.go.jp/kankocho/tax-free/page01_000001_00021.html
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株式会社日本免税: https://jptaxfree.com/


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