BaaSが切り拓く中小企業金融の新たな地平
API(Application Programming Interface)を通じて銀行の金融機能を提供するBaaS(Banking as a Service)は、金融と非金融の世界を融合させ、業界変革を加速させています。本稿では、この変革の中核であるBaaSの概念とその革新的な活用事例を通じて、生活のあらゆる瞬間に金融機能が溶け込む「クロスインダストリー」の世界を紹介します。さらに、この金融の変化を受けて2025年11月にサービスを開始した中小企業向け新金融プラットフォーム「ラクスルバンク」の特徴と狙いを詳述します。

中小企業の現状と金融サービスの課題
これまで中小企業向けの金融市場は、伝統的なメガバンクや地方銀行の基盤の上に成り立ってきました。しかし近年、フィンテック企業やネット銀行がデジタル技術で攻勢をかけ、業界の地殻変動が起きています。この変化を促すのは、中小企業が長年抱える経営課題であり、これが新しい金融サービス需要を刺激しています。
人手不足と生産性向上の要請
慢性的な労働力不足の中で、バックオフィス業務の効率化は喫緊の課題です。企業規模が小さいほど、決済・経理に関する業務のデジタル化や効率化が進んでいない現状があります。


従来の法人向け金融機関の課題
従来の法人向け金融機関は、サービスや手続きにおいてデジタル化や効率化が遅れています。これが多忙な中小企業経営者の時間とコストを圧迫しています。特に、複雑な手続きや時間の制約、高止まりしたままの振込手数料やカード年会費などのコスト構造が、中小企業の財務体質や事業成長の足かせとなっています。

新しい金融サービスへの要請。そのインフラを担う中核要素の一つがBaaSの進化です。BaaSは、これまでの銀行機能をAPIで解放し、異業種企業による「金融機能の組み込み」を可能にしました。この技術の進化と中小企業の課題解決ニーズの融合により、金融と非金融の境界が曖昧になる「クロスインダストリー()」が急速に展開しています。これは、中小企業向け金融市場の未来を形作る重要な原動力となっています。
()クロスインダストリーとは、異なる業界や分野が連携し、それぞれの知識や技術、ノウハウを組み合わせて、新たな価値やビジネスモデルを生み出す「異業種連携」や「業際ビジネス」を指します。
BaaSの概念、進化と未来
BaaSは、銀行がAPIを介して、預金、融資、決済などの金融機能を非金融事業者に提供する仕組みです。BaaSの活用によって、非金融事業者は銀行ライセンスを別途取得することなく、自社サービス内に金融機能を組み込むことが可能になります。この「エンベデッド・ファイナンス(組込型金融)」の実現こそ、BaaSが提供する核心的な価値です。
BaaS注目の背景
注目の背景には、社会全体のデジタル化の進展、フィンテックの急速な普及、そして個々のライフスタイルに合わせたパーソナライズされた金融サービスへの顧客ニーズの多様化があります。さらに、日本では2017年5月26日に参議院本会議で可決・成立した改正銀行法により、銀行や信用金庫に対してオープンAPIの公開が努力義務化されました。これが、BaaSの実現に向けた重要な転換点となっています。
活用の拡大と新たな価値創造の可能性
今後、BaaSの活用はますます拡大し、一般化していくと予測されます。金融と非金融の境界は一層曖昧になり、「クロスインダストリー」による新たな価値創造が大いに期待されます。
国内外のBaaS事例
近年、BaaSを活用した非金融事業者による決済サービスの提供が、アパレル・小売、モビリティ、通信、ITなど幅広い業界で増加しています。事業者は、口座、決済、融資、送金といった金融機能を、自社サービスの中に直接統合できる点が大きな特徴です。

BaaSが拓く金融の未来像
BaaSの普及は、金融と非金融の境界を曖昧にし、日常生活のあらゆる場面でストレスなく洗練された金融サービスが利用できる環境を整備します。BaaSの普及によって起こる具体的な変化として、以下のような点が考えられます。
サービスの深化と利便性の向上
例えば、航空(日本航空株式会社)、交通(JRグループ)、小売(Walmart Inc.)といった事業会社が銀行ライセンスを持たずとも、自社ブランドでユーザーにとってメリットの大きい金融サービスを顧客に直接提供できるようになります。利用者は、銀行取引によるポイントやマイルの獲得、金融サービスの利用を通じたファンクラブ特典の取得など、企業ブランドに強く紐づいたパーソナライズされた金融体験を得られるようになります。
金融と事業会社が融合する「クロスインダストリー」の世界
BaaSは、従来の「公共」「製造」「流通」「金融」といった縦割りの業界構造を根本から融合させ、各業界が混ざり合う「クロスインダストリー」の世界を実現します。BaaSは、業界の境界領域に金融機能を組み込むための共通インフラとして機能します。異業種の企業(ブランド)が持つ顧客接点や行動データ(例:購入履歴、移動データ)を、銀行機能(決済、送金、融資)と連携させることで、これまでにない新しい顧客体験の創造が可能になります。
BaaS市場を駆動する新しいエコシステム
BaaS市場の成長は、以下の三者によって構成される強固なエコシステムの形成を通じて加速します。
- ブランド(Brand): 日本航空、JRグループ、Appleなどのように、強固な顧客接点を持つ異業種の企業
- ライセンスホルダー(License Holder): GMOあおぞらネット銀行、住信SBIネット銀行、楽天銀行、Green Dot Bankなどのように、金融機能を提供する銀行
- イネイブラー(Enabler): ブランドと銀行をAPIなどの技術でつなぎ、金融機能の組み込みを支援するテクノロジープロバイダー
非金融事業者が保有する膨大なデータが金融機能と融合することで、BaaSは金融の未来を大きく変える原動力となり、社会のデザインにおける中核的な役割を果たすことが期待されます。
ラクスルによる新金融プラットフォーム事業「ラクスルバンク」
金融業界と異業種間におけるビジネスモデルを根幹から変革する「BaaSの進化と活用」がいかにビジネス領域を拡大しつつあるかを解説しました。この金融業界の変革を契機に、ラクスル株式会社は100%出資子会社であるラクスルバンク株式会社を設立しました。そして、2025年11月27日にGMOあおぞらネット銀行株式会社のBaaSを活用し、中小企業向け金融プラットフォーム「ラクスルバンク」のサービス開始を発表しました。
「ラクスルバンク」の主な強み
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スピードと利便性: 最短当日、オンラインで法人口座開設が完了し、スピーディーに利用可能です。
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圧倒的なコスト優位性: 他行宛て振込手数料を業界最安級の119円/件に設定し、中小企業の固定費削減に貢献します。
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ラクスルグループの各種サービス連携と経済的メリット: ラクスルサービス(印刷・広告・ホームページ制作等)の利用で、2.0%のポイント還元を実現します。これにより、グループ内サービスと金融体験をシームレスに統合します。
「ラクスルバンク」は、単なる銀行代理業の開始ではなく、BaaSを活用することで、金融サービスの利用障壁を劇的に下げるとともに、中小企業のビジネスを効率化するという事業指針を具現化していくものです。
テクノロジーと金融を融合させることで、中小企業が経営・事業に集中し、さらなる成長を実現できる環境を提供します。ラクスルバンクは、今後もBaaSの可能性を最大限に活用して中小企業向け金融プラットフォームのデファクトスタンダードを目指します。
関連情報
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ラクスルバンク株式会社 コーポレートサイト: https://www.raksulbank.co.jp/
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ラクスルバンク サービスサイト: https://raksulbank.com/
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RAKSULグループ コーポレートサイト: https://corp.raksul.com/
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RAKSULグループ 運営サービス一覧: https://corp.raksul.com/services/
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RAKSULグループ お問合せ: https://corp.raksul.com/contact/
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リリース本文: https://corp.raksul.com/wp-content/uploads/2025/11/c2707dc13d5a16a8bfff90c32d9e5173.pdf


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