金利上昇でもマンション価格が崩れない理由:市場の「高止まり」と「選別」の真相

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金利上昇でもマンション価格はなぜ崩れないのか?市場の「高止まり」と「選別」の真相

2025年12月の政策金利引き上げ以降、日本の住宅ローン市場は明確な転換期を迎えています。日本銀行の金融政策変更は市場金利を通じて住宅ローンへと波及し、メガバンク各行は2026年4月に変動型住宅ローンの基準金利見直しを予定しており、金利上昇は確実視されています。

金利上昇は購入者の借入負担を増加させ、国際情勢によるエネルギー価格の不安定さも相まって、実質購買力の低下という二重の逆風が生じています。これにより、中古マンション市場の需要環境には変化の兆しが見え始めています。

建築費高騰が支える「価格の下支え構造」

マンション価格の動向は需要側のみでは説明できません。現在の市場では、建築費や資材価格の高騰が構造的な価格上昇圧力として機能しています。人件費の上昇や資材供給の制約は新築マンション価格を押し上げ、その結果として中古マンションにも価格の波及が生じています。

金利上昇によって需要が抑制される一方で、供給側のコスト増が価格を押し上げるという、相反する力が同時に存在している状況です。この綱引きの中で、市場は「下がりにくいが上がりにくい」、いわば高止まりの局面に入りつつあります。

再販事業の減速が示す市場の変調

こうした環境変化を最も敏感に反映しているのが、再販市場の動向です。50㎡以上の新規売出件数に対する再販物件の割合を見ると、2026年2月時点でその比率は大きく低下しています。

東京都23区における中古マンションの新規売出数に対する再販物件の割合

再販事業は、不動産会社が融資を活用して中古マンションを仕入れ、リノベーションによって付加価値を高めて販売するビジネスモデルです。しかし、購入需要がやや鈍化する中で、政策金利上昇に伴う資金調達コストの増加が重なっています。需要が抑制されつつあるにもかかわらず、仕入れコストは上昇しているという「逆風下のビジネス環境」が生まれており、金融機関は融資姿勢を慎重化させ、再販事業者も新規取得に対して慎重になっています。再販物件の減少は、市場において取るべき正しい態度を象徴する現象と言えます。

金利上昇でも価格が下がらない理由

一般的に、金利が上昇すれば借入可能額が減少し、不動産価格には下落圧力がかかると考えられます。しかし実際の市場では、必ずしも単純な価格下落にはつながっていません。

特に東京都周辺、なかでも神奈川県・埼玉県・千葉県といったエリアでは、価格そのものではなく「選択の中身」が変化する傾向が顕著に見られます。例えば、同じ予算内であれば「築年数を妥協する」「専有面積を縮小する」「築古物件を購入して自らリノベーションする」といった行動が増加しています。つまり、需要は消滅するのではなく、価格帯の中で再配分されているのです。

市場を支える「代替需要」の存在

現在のマンション市場において重要なのは、こうした「代替需要」の存在です。金利上昇によって純粋な購買力は低下しますが、それを補う形で選択肢を変える動きが生じ、市場全体としての需要は維持される構造となっています。

この結果、消費者が許容できる価格の上限は徐々に意識され始めていますが、市場そのものが大きく崩れる兆候は見られません。むしろ、局所的な調整はあっても、「建築費の高騰」や「需給バランス」によって価格は一定水準で支えられる展開が想定されます。

今後の市場は「下落」ではなく「選別」へ

今後のマンション市場は「全面的な価格下落」というよりも、「選別の強化」という形で調整が進む可能性が高いと考えられます。金利上昇という逆風は確かに存在しますが、それ以上に供給制約と代替需要が市場を下支えしているためです。

したがって、今後の焦点は「どの価格帯・どの物件が選ばれるか」に移ります。市場全体が崩れるのではなく、条件の弱い物件から順に調整が進む。そうした構造変化の中に、現在のマンション市場の本質があると言えるでしょう。

金利動向のまとめ

変動金利

2026年3月の変動金利は全体としては横ばいですが、一部の銀行で引き上げが実施され、上昇トレンドは緩やかに継続しています。2025年12月の日銀の利上げを受け、メガバンクが基準金利を約0.25%引き上げたことが影響しています。他の銀行も今後追随すると見込まれ、来月以降は上昇が加速する可能性があります。日銀は追加利上げに前向きであり、今後も段階的な金利上昇が続く見通しです。

DH住宅ローンの変動金利指数の推移

10年固定金利

2026年3月の10年固定金利はほぼ横ばいですが、前年と比較すると上昇基調を維持しています。長期金利の影響を受けつつも、足元では金融機関ごとの判断にばらつきがあり、方向感はやや不透明です。多くの銀行が金利を引き上げる一方で、指数は横ばいにとどまりました。水準は概ね2%超まで上昇しており、中長期的には上昇余地がありますが、短期的には一服感も見られます。

DH住宅ローンの10年固定金利の推移

全期間固定金利

2026年3月の全期間固定金利は横ばいながら高止まりしており、上昇トレンドが継続しています。全金融機関が3か月連続で金利を引き上げており、上昇圧力の強さがうかがえます。水準は3%台が中心で一部では4%に到達し、前年から大きく上昇しています。一方で変動金利との比較から選択は限定的な状況です。今後も上昇余地はありますが、当面は上昇が一服する可能性もあります。

DH住宅ローン全期間固定金利指数の推移

筆者プロフィール

福嶋真司氏のポートレート

福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社 データ事業開発室 不動産データ分析責任者
福嶋総研 代表研究員

早稲田大学理工学部卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行っています。また、大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供しています。

マンションリサーチ株式会社について

マンションリサーチ株式会社は、不動産売却一括査定サイトを運営しており、2011年創業以来「日本全国の中古マンションをほぼ網羅した14万棟のマンションデータ」「約3億件の不動産売出事例データ」及び「不動産売却を志向するユーザー属性の分析データ」を収集しています。これらのデータを基に集客支援・業務効率化支援及び不動産関連データ販売等を行っています。

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